シリコンバレー・深セン・スコルコボ?世界でも注目されるロシアのイノベーション拠点「スコルコボ」

シリコンバレー・深セン・スコルコボ?世界でも注目されるロシアのイノベーション拠点「スコルコボ」

ロシア・モスクワの郊外にある「スコルコボ(Skolkovo)」という地域をご存知だろうか?
現在この地域は、ロシアのシリコンバレーと呼ばれ世界でも注目されている。

2010年に、メドベージェフ元大統領が「スコルコボをロシアの一大イノベーション拠点にする」として「スコルコボ計画」のもと作り上げられた経済特区だ。

この街は、スコルコボテクノパークというインキュベーション施設を中心に研究都市として街が作られている。
以下は現在世界で注目されている「スコルコボ」が1分でわかる解説である。

1分でわかる!スコルコボ

アメリカと続いた技術力競争を強みに。スコルコボ計画とは

ロシア政府はこのスコルコボ計画に対し初期の3年間に20億ドルもの資金を投じた。この計画では、「バイオテクノロジー」「エネルギー」「原子力」「宇宙通信」「IT(情報技術)」の5つの分野でベンチャー企業の育成を目指している。

スコルコボという都市が新たなテクノロジーが生まれる場所となるように、コミュニティをベースに「知識・情報」が流通するしくみを形成するなどのロシアスタートアップ育成を目的としてエコシステムの充実を図っている。シリコンバレーはIT技術を活用したto C向けのスタートアップ産業の育成が目立っているが、このスコルコボではto B向けの研究系スタートアップの育成を狙っているようだ。

このプロジェクトはロシア政府の投資のみならず、世界の名だたる企業からの投資も相次いでいる。現在投資をしている企業はBoeing(ボーイング), Johnson & Johnson, IBM, Intel(インテル), Microsoft(マイクロソフト), Nokia(ノキア), Samsung(サムスン) 等の大企業である。

Where?

場所はモスクワから20-40分ほどの場所にある。
モスクワの位置は以下の通り。

 

What?どのような施設があるのか?

政府を中心に街全体を開発しており、この経済特区の中には以下のような施設が整備されている。
テクノパークと大学を中心に街が形成されており、街全体で試験を行なったりすることもある。

-スコルコボテクノパーク(インキュベーション施設)

-居住区域(アパート・一軒家 等)

-フィットネスセンター/公園

-公共施設(役所などの公的機関による施設)

– 大学
スコルコボ科学技術大学(略称 Skoltech) という大学。2011年に設立。米国マサチューセッツ大学(MIT)と連携し、MIT方式の教育プログラムを取り入れた大学院大学で、英語を大学内の公用語として使用している。

-教育施設(学校)

-Co-working space/Hack space

How ?どのようなエコシステムの形成を目指し取り組んでいるのか

「経済特区」として、スコルコボの街全体を開発しているため、ヒト・モノ・カネ・情報が流通するしくみが形成されている。この特徴に関しては、アメリカのシリコンバレーや、中国の深センと非常に近い。シリコンバレー・深センも政府が力を挙げて、ヒト・モノ・カネ・情報が循環するしくみを作っており、街全体が、スタートアップやイノベーションが生まれやすい仕組みになっている。

スコルコボは街全体が研究都市になっている。企業の研究施設のみでも23の研究施設。それらに加え、大学の研究施設は26もの数を誇る。
これらの研究と同時に大学では、英語教育を行うほか様々なプログラムを通してエントレプレナーシップを育成していく教育もなされている。このスコルコボ計画に準じて設立された大学で、この大学に集まってくる学生自体も起業志向が高い学生が多いことは予想される。

研究者もしくはその家族もこの街に暮らせるように居住区域やフィットネスセンター、公園などの施設などのインフラも整備されており、このようにしてヒトとモノを集約させることで自然と情報が流通しやすい仕組みができあがっている。また、ひとつの街としてスコルコボが構成されることから、街を試験に使用するなどの事例もある。

これらのみならず、スコルコボテクノパークなどのインキュベーション施設などでは定期的にスタートアップを集めてミートアップなどのイベントも行なっている。

これらのヒト・モノ・情報が集うことで資金を提供する企業や投資家VCと起業家(スタートアップ)も繋がりやすい仕組みができあがっている。

写真で巡るスコルコボテクノパーク

実際にGlobity編集部も2018年の2月にスコルコボテクノパークに足を踏み入れている。そこで、実際に行ってみたリアルなテクノパークの様子を写真スライドと共にお届けする。

スコルコボテクノパーク入口

テクノパークの内観(様々な収容人数のイベントスペース等がある)

参加したのはロシア×日本 の政府によるEmbassy Pitch

インキュベーション施設内のスタートアップ ①(義手の技術 を取り扱った事業を行うスタートアップ)

インキュベーション施設内のスタートアップ ② (ドローンの技術を利用したスタートアップ)

シリコンバレー・深セン・スコルコボが生むイノベーション

ロシア政府のスコルコボ計画によって作られた街、スコルコボは近年新しい時代の礎を築いてきたシリコンバレーや深センと非常に近い。イノベーションを起こすためには、起業家、起業支援者、企業、大学、金融機関、公的機関等が深く結びつくこと、そして情報の流通を活性化させることも非常に重要なポイントである。
ヒト・モノ・カネ・情報がコンパクトに循環する環境をつくることはイノベーションをより加速させるであろう。

シリコンバレーは「新しい社会の構造や概念を生み出す」街。深センは新たなプロダクトが「爆速で生まれ続ける」街。だとしたら、スコルコボは、世界の企業にイノベーションを起こす「新しい技術を生み出す」街になるのではないだろうか?

今後もスコルコボには目が離せない。

【参照】
https://sk.ru/news/
図解作成: Globity 編集部

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