「ロシア=ハッカーの国」
多くの日本人にこのイメージが浸透している。
しかしそのイメージにはロシアエンジニアの技術力の高さが、背景にあるのではないだろうか?
しかし具体的に彼らの技術力の高さを知る者は少ない。そこで、教育という側面からロシアエンジニアの謎を紐解いていく。
世界一を誇るエンジニア輩出数とレベルの高さ
上の表は、国連教育科学文化機関統計研究所(UNESCO Institute for Statistics)の調査によるもの。
この統計によると、なんとエンジニア輩出国のトップはロシアであったのだ。しかも第2位のアメリカの輩出数の2倍である。しかしロシアエンジニアの素晴らしさは輩出数の多さのみではない。人数が世界一の上に、彼らの技術力も世界一なのだ。
ICPC(International Collegeate Programing Contest)という大学対抗の国際プログラミングコンテストが毎年開催されているのだが、毎年ロシアの大学が優勝を勝ち取っているのだ。過去3年の優勝校を見ても全てロシアの大学である。しかも毎年違う大学なのだ。この結果からもロシアのエンジニア達のレベルの高さが伺える。
ICPC
(International Collegeate Programing Contest)
国際 大学対抗プログラミングコンテスト
世界中から5万人以上の生徒、そして4,000以上の大学から出場する世界的なプログラミングのコンテストである。毎年400ヶ所以上で予選が開催され、それぞれの予選を勝ち抜いて世界大会が行われる。
エンジニアの土台を持つ国民
彼らは、初等教育からエンジニアとしての基礎学習を積んでいる。しかし、その「情報科学」というのはどのような要素で構成されているのか。詳細を調べたところ、FES(連邦教育基準)で定められたInformaticsの学習ポイントは以下の通りであった。
- Theoretical foundations (理論的基礎)
- Principles of computer’s functioning (コンピューターの動作する基本)
- Information technologies (情報技術)
- Network technologies (ネットワーク技術)
- Algorithmization (アルゴリズム化)
- Languages and methods of programming (プログラムの言語と手法)
- Modeling (モデリング)
- Informatics and Society (Informaticsと社会)
これらの知識・技術の基本を学ぶことによって、複雑なサイバーセキュリティや、現在需要が高まっているブロックチェーン技術や、AI、データサイエンスなどの技術に長けた人材が輩出されやすくなるのであろう。
高校を卒業するまでにこれらの基礎を学習することで、大学での研究にスムーズに入ることができる。したがって、比較的低いハードルで、複雑な技術に対しても挑戦することができる。ステップアップしていくという自然の流れの中で、スムーズに技術力を上げることができるというのは、このロシアの大きな財産と言っても過言ではないのかもしれない。
エンジニアの英才教育。ロシアIT教育の強み
ロシアでは7歳から17歳にかけて、情報科学に関する基礎学習が進められる。大学入試の科目も、専攻したい学部によっては、この情報科学を選択せねばならないそうだ。
幼い時から、このような情報に関わる機会が半強制的にあるため、コンピュータに対してのハードルは非常に低いのである。このハードルの低さこそが彼らの強みであり、他国から見ると高度な技術であっても、ロシア国内においては皆ができてあたりまえという「常識」を生み出すのだ。
ちなみに、学校教育のみならず、ロシアでは多くの国民が子供の頃から「チェス」をやっている。
現在は廃止されているが、以前は小学校の必須科目だったそうだ。
そんなチェスは学校で部活ができるほど人気の「競技」である。
チェスは日本の将棋と非常に似ていて、論理的思考・予測能力などを自然に使うゲームである。したがって幼少期から遊びながらこれらの思考を彼らは養っているのだ。
実際にロシアのエンジニアにインタビューしてみた
これらの調査を統計や、現地の情報を元に進めたものの、実際に教育を受けた人の生の声が最も重要である。
そこでロシアでビジネスアナリストとして働くMichael さんにインタビューをした。
Michael さん プロフィール
大学 : ITMO University
専攻: Organization and technology of information security
職業: ビジネスアナリスト(サンクトペテルブルグの某IT企業)
Michael さんにはチャット上でインタビューに対応していただいたのだが、とにかく丁寧でかつわかりやすくロシア教育について語ってくださった。
そして最後にMichael さんが伝えたメッセージこそが、実はまさにロシア教育の本質なのではないかと考える。
彼らの教育制度は、IT人材を育成するためには無論最高な環境である。
しかしそれだけではなく彼らの「価値観」自体が高度な技術や学びを習得する仕組みを作っているのではないだろうか?
確かに、彼以外のロシア人と話をしても
「結局は自分で勉強することが一番大事」
だとよく言う。受動的に教育を受ける姿勢ではなく、主体的に「勉強する意味」を考えながら学習をするこの価値観自体も彼らが優秀と言われる理由の大きな要因ではないだろうか。
しかし、現在ロシアはまだまだ不況が続いていて、彼らが優秀にも関わらず国内での好条件な就職は難しい。それ故この優秀な頭脳は実は世界中で活躍しているのだ。
国内が不況であるとはいえ、個人としてそれぞれが自分の生き方、学び方に対して常に問いを立てる国民性。そして幼少期から育成された理系脳。この頭脳こそが国を支える最強の「資源」なのではないだろうか。この「世界一」のポテンシャルを持つ国ロシアには今後も目が離せない。
(執筆・デザイン: 馬本 ひろこ_@mamomanmo)
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