22世紀の「普通」が生まれる街?「もうひとつ」の要注目ロシアIT特区イノポリス

22世紀の「普通」が生まれる街?「もうひとつ」の要注目ロシアIT特区イノポリス

「AI、ブロックチェーン、量子コンピュータ、自動運転……」

現在、様々な技術、そしてプロダクトが研究者たちの手そして脳から世の中へと贈り出されている。

そんなイノベーションの芽を息吹かせる研究者らが集まる研究都市が、
実はロシア連邦・タタールスタン共和国の「イノポリス(Innopolis)」という街なのだ。

以前にもGlobityにて、「スコルコボ」というITに特化したロシア経済特区の紹介を行ったが、
今回は「もうひとつ」の要注目IT特区についてご紹介する。

この10年間だけでも「普通」という概念がどんどんアップデートされている。
テクノロジーの発展でわかりやすい例を出せば、
ほんの数年前までスマートフォンは「特別なもの」として見られていた。
しかし、いつの間にか殆どの人がスマートフォンを持つようになり
スマートフォンを持つことが「普通」になった。

このように日々テクノロジー技術は進化し、そして開発されると共に
「普通」の概念自体も更新され続けている。

この街は、そのようなイノベーションの芽が生まれる科学特区として存在している。
今回は、その秘められた「イノポリス(Innopolis)」という街を紹介する。


1分でわかるイノポリス

Where?

場所は、ロシア連邦・タタールスタン共和国内。

「ん?ロシア連邦の中にタタールスタン共和国?」

「?????」

「いや、ロシア? タタールスタン共和国?どっち?」
と思う方もいるだろう。

ロシア「連邦」は名前の通り、多数の支分国が、ひとつの主権のもとに結合している複合国家なのだ。

つまり、ロシア連邦 の中の タタールスタン共和国 である。
ロシアにはタタールスタン共和国を含めロシアには22の共和国が存在している。

そして、肝心のタタールスタン共和国は以下の図より確認いただきたい。

ロシア国内の中でも比較的ヨーロッパ側の地域でかつ、アジア諸国とも近い距離にある。

一体どんな街?イノポリス

イノポリスがどのような街なのかということについては、おそらくこの動画が世界一わかりやすいのでこちらを紹介。

2012年6月9日。
ロシア連邦のメドベージェフ大統領とタタールスタンのルスタム大統領らによって、イノポリスという科学特区が建設中だということが明かされた。
それから3年後の2015年にイノポリスは正式にオープンされた。

現在も複数の開発計画が進んでおり、中核となる機関をイノポリス大学におき、様々な施設やコミュニテイが建設されたり、企業が拠点を置いたりしている。

世界的に有名なセキュリティソフトを開発・販売するカスペルスキーがイノポリス大学との提携を結んだり、ロシアのGoogleとも言われるYandexは自動運転自動車の試験運転を行ったりもしている。

写真で巡るイノポリス

イノポリス大学

▶こちらはこの街の中核となるイノポリス大学
-授業は全て英語で開講され、ITに特化。
-コンピュータ・サイエンス/ ロボティクス/ ソフトウェアエンジニアリング などの領域に特化した人材を育てる。
もちろんロシアの大学なので、受験の要件として基礎的なプログラミングの知識がないと
大学をうけることすらできない)
※ロシアの入試・教育の詳細については、リンク先の記事参照

(大学内…とは思えないような綺麗さ…。
リフレッシュをはさみながら勉学・研究に集中できることは間違いなさそうだ。)

Special Economic Zone(SEZ)

こちらは、イノポリスの主要施設であるテクノパーク。
前回イノポリスを訪問したのは2月で、真っ白な銀世界と澄んだ水色の空が迎えてくれた。
一見ロシア=極寒 だと思われがちだが、ロシア国内は、セントラルヒーティングが充実しているので、案外寒くない。

(白を貴重として、緑・ブラウン・黒 などの色がよく見られる施設のデザイン。
ガラスから映る青空もこの空間にマッチしていて、ナチュラルで落ち着けるような空間を作り出している。)

幼稚園

(写真はイノポリスの公式サイトより)

 

ちなみにこの幼稚園内では、通常の幼児教育として、運動やお絵かきなども行われるそうだが、それらに加えてロボットを交えての遊びなど、幼少期からテクノロジーに興味を持つような教育もなされるとのこと。
英語・ロシア語 ともに話せる先生が常駐しているとのこと。

自動運転車の試験運転も…!

こちらは、イノポリスに拠点をおく、ロシア国内では、Googleのユーザー数をゆうに超える、Yandexという企業の取り組みだ。
Yandexは近年東ヨーロッパにおけるUberのサービスと合弁して、40億円規模の企業を立ち上げた。
そのYandex.taxi は、去年モスクワでもヨーロッパ初の公道試験運転を行っており、非常に勢いのある動きを見せている。
この自動運転タクシーでは、それぞれが事前に設定した行き先から目的地を選択する。

以下の動画は、その試験運転のプロモーション動画である。
自動運転車の運転の様子や、タクシーの配車の方法などが確認できる。


このタタールスタン共和国の首府(日本で言うならば県庁所在地的な都市)は
「カザン」という都市なのだが、こちらの「カザン」にもITパークというインキュベーション施設があり、こちらにはMicrosoftの拠点などもある。

このITパークでは、官・民 が互いに協力しながらさまざまなイベントや取り組みが行われており、国際的な交流も盛んな場所になっている。

カザンは、今年のワールドカップの会場都市なので馴染みやすいはず。

ちなみにこのタタールスタンには「Strategy 2030」という計画があり、ひとつの街としての開発も進んでいくため、
これらの土地や生活環境の心地よさもよりアップデートされ、
多くの人が惹かれて人材が集まることは、容易に予想される。

タタールスタンの中のひとつの地区「イノポリス」が今後どの様にアップデートされていくのか?
そしてこの地域でどのようなイノベーションが生まれていくのか?
という部分には今後も注目していきたい。

(情報・写真提供: 越 陽二郎 / 執筆: 馬本 ひろこ)

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